結論から言いたい。ここで伝えたいことはただひとつ。
どうか全ての「偏見」を横に置いて、このアニメを見てほしい、ということだ。
本作の要素やクオリティについてここでは書かない。
一つ一つ挙げていたらキリが無いし、そんなの冒頭の10秒を見ればわかるから。
明らかに、凡庸なアニメとは一線を画している。とにかく豪華なんだ。
でも、単にクオリティが高いだけじゃ、感想なんか書いたりしない。
なぜ、感想を書こうと思ったか。
それは、この作品が、”青春”と”日常”に対してひとつの”回答”を与えてくれたからだ。
みんなが求めていた”日常”って何さ?
これまでどれほど極上の日常アニメを消費してきただろうか。
京アニの「日常」や「小林さんちのメイドラゴン」
動画工房の「NEW GAME!」
P.A.WORKSの「SHIROBAKO」
C-Stationの「ゆるキャン▲」
今や当たり前となった日常モノ。
ゆるやかな日常で感じる笑いと癒やし、成長していくキャラたちに目頭を熱くする。
日常の姿をした”非日常”。そこに俺たちは心を動かし、感情をこれでもかと燃やしてきた。
この「明日ちゃんのセーラー服」もご他聞にもれず、ごくオーソドックスな展開をしていく。
入学式。初めての友達。机を合わせて食べる給食。緊張する友達の部屋。部活の体験。友達とのデートや買い物。そして体育祭。
凝った設定はない。強いて言えば、その学校にセーラー服を着ているのが、主人公・明日小路(あけびこみち)だけという点だ。
明らかにクラスで浮く存在である明日ちゃん。
しかし、どこまでも純粋で天真爛漫な彼女に、クラスメイトたちはどうしようもなく惹かれ、彼女と過ごす青春に仕合せを見出していく。
そんな彼女たちの日常を”覗き見”のように眺めていくなかで、ある思いがよぎる。
「あれ、日常ってこんなに綺麗なものだったけ?」と。
この作品が描こうとしている日常、それは「刹那」だ。
特別なことは起きない。全てが誰にでも経験がある、なんてことのない青春の一コマ。
そのどうでもいい一瞬を、この作品は異様なまでに丁寧に、愛を込めて描いている。
青春の一瞬がいかに大切で、どれほど生命力に溢れているものか。
それを作品として表現した日常アニメが、これまでいくつあっただろう。
日常の一瞬を徹底して切り抜き、どうしようもないくらいに愛でる。
みんなが見たかった「日常」を、この作品は惜しげもなく展開していく。
青春は「はじまりのセツナ」で彩られている
OP曲のサビの歌詞。
時間が止まれば 良いのになって思うよ
「はじまりのセツナ」 作詞:杉山勝彦 から引用
まだ何も知らない同士なのに
どうしてなの? もう君のことが好き
はじまりのセツナ
「はじまりのセツナ」と聞いていても、最初は意味が分からなかった。
でも、今ならなんとか言葉にできる気がする。
はじまりのセツナ。それは時めくの瞬間だ。
青春では、人生の”はじめて”が怒涛のように訪れる。
それ同時に失敗や成功を経験することで、心は揺れ動く。
はじまりの”刹那さ”と、一度過ぎたら二度と戻れない”切なさ”。
この”セツナ”があるからこそ、青春は輝き、どうしようもないくらいに胸を焼き焦がすのだ。
離れたくない。失いたくない。忘れたくない。
だから少女は涙を流す。小さな手を胸に当て、ギュッと握りしめながら。
今という瞬間に感じた想いを、胸の中に大切にしまい込むために。
真っ直ぐな少女がもたらすのは”希望”
正直で純粋で、疑うことを知らない明日ちゃん。
過去や未来にとらわれず、危うくも今を懸命に生きる彼女に、取り巻く女の子たちは忘れていた“今の自分”を取り戻していく。
その様子が、まるで自分を見ているかのようで、涙が出てしまった。
大人に近づくにつれ、過去のトラウマに足もとをすくわれ、未来に不安を抱くようになる。
すると、次第に挑戦から遠ざかり、同じところをウロウロしてしまう。
失敗が怖い。迷惑をかけるのが怖い。人から嫌われるのが怖い。
コワイ…コワイ…コワイ。
そうして心が薄暗い靄に包まれると、人は殻に閉じこもるように、心を閉ざす。
しかし、だれもそんな暗い未来を望んでいない。だれだって、前を向きたいのだ。
なぜ人は日常を、青春を、アニメに求めるのだろう?
それは、希望を持ちたいと願ってしまうからではないだろうか。
どれだけ現実が絶望的であっても、幸せになりたい。
どれだけ才能がなくっても、憧れに手を伸ばしたい。
もっと自分を肯定して、人生を笑って謳歌したい。
ひとは、希望を持たずには生きられないのだ。
現実は不満だらけだ。
俺だって、このレビュー書いてて、むちゃくちゃ悔しい。
なにせ、もっとうまく書ける人なんて、いくらでもいるからだ。
そんなことを考えると、こんな感想書いて何の意味があるんだって、自分に石を投げたくなる。
それでも。
この心に沸き上がった想いをどうにかして形にしたい。
自分が感じた感動の熱量や作品の凄さを、100分の1でもいいから誰かに伝えたい。
カッコ悪いとかヘタクソとか、才能ないとか言われても知らん!
誰に何て言われようと、俺は、俺が言いたいことを言う!
自分の本音を、簡単に曲げてたまるものか!!
こんなふうに思えるのも、きっと明日ちゃんのおかげ。
明日ちゃんによって”今の自分”を取り戻せるのは、クラスメイトたちだけではない。
もちろん、見ている俺たちも、明日ちゃんに希望を、勇気をもらえるのだ。
そんな素晴らしい作品を、フェチだとか変態だとかフェミさんの餌食とか、外っ面だけで判断してほしくない。
もう一度言おう。
この作品は、全ての偏見を横に置いて見るべき青春日常アニメである、と。
ちなみに時間がないのなら、7話「聴かせてください」だけでも見てほしい。
「真剣」であるということが、どれほど人の心を動かすのかを、再確認できるから。
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