【ジョゼ映画感想】青春アニメの新たな金字塔

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あらすじ

大学4年の恒夫は、メキシコに留学するためにバイト三昧の生活をしていた。

あるバイト帰りの夜、恒夫は偶然、車椅子で坂道を暴走していた下半身不随の女性・ジョゼを助ける。それをきっかけに、恒夫はジョゼの祖母から娘の世話をアルバイトとして持ちかけられる。

「外は恐ろしい猛獣ばかり」と教えられて育ったジョゼ。恒夫を”管理人”と呼び、始めは気に入らなかったものの、”海”の話をきっかけに、徐々に心を開いていく。

アニメ映画で一番、人に勧めたいと思った作品

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画像引用元:アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』本予告より©2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project

どんな作品だったかと聞かれたら、きっとこう答える。「アニメ映画で一番、人に勧めたいと思った作品だ」と。どんな感想を書こうか3日以上悩んでるけど、たぶんこの言葉が一番しっくりくる。

なぜそう思ったのか。一番の理由は、物語が”温かった”から

イヤなキャラや不愉快なシーンがない。メリハリがあって、2時間があっという間に経ってしまう。

それでいて、障害を愛の力で乗り越えるという王道展開がとにかく泣ける。

「いい映画がみたい」、「感動したい」、「元気をもらいたい」。そんな視聴者の”こうあってほしい”という理想を、そのまま形にしたような映画だった。

誰でも見れて、誰でも感動できる。そんな安心感のあるストーリーはめったに無い。

これから先、これ以上の純愛ラブストーリーは書けないかもしれない

物語を綴った脚本・桑村さや香氏ですらこう語っているのだ。これが全て。本当に、よくぞ言った。

それくらい、物語の完成度が高かった。

物語の優しさを、”絵”が支える

アニメジョゼは、とにかく絵作りが丁寧で美しい。

心にダイレクトに伝わってくるような温かみある作画や背景が、物語の優しさを支えていた。



制作会社はボンズ。ハガレン、エウレカ、僕のヒーローアカデミアなど、アクションやバトルものに定評がある会社だ。

一瞬目を疑った。「バトルものの会社がなんでこんな繊細な青春の心理描写が描けるのか?」と。

脳筋のボンズさんの潜在能力をここまで引き出す監督とは一体何者……?

ディテールの引き算

今回指揮を執ったのは、映画『おおかみこどもの雨と雪』で助監督を務めたタムラコータロー氏。

プログラムのインタビュー記事を読んだけど、このタムラ監督、絵作りへのこだわりが尋常ではなかった。

映画の場合、絵のディテールを細かくして豪華に見せ、”映え”を狙う。

しかし、ジョゼでは「ここぞ!」という場面を際立たせるために、キャラの影をポイントに絞ったり、背景美術に水彩を使って線を曖昧にしたりと、敢えてディテールを引き算していたとのこと。

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画像引用元:アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』本予告より©2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project



そうすることで、「シリアスな作品を明るく描く」工夫を随所に散りばめたんだとか。

これは大胆な賭けだ。劇場の大スクリーンでディテールを削るということは、画面が粗くなり、”手抜き”な印象を与えかねない。客が白けてしまう可能性が高い。

そのリスクを取ってまで世界観を作り上げようとしたタムラ監督のこだわり。もう天晴れというしか無い。

心情に寄り添う色と光

また、印象的だったのが劇中の色彩と光の加減。

現実の海と夢の中の海、幻想的な夜、夕暮れの海辺、花吹雪が舞う桜並木など。

普段のアニメではさらっと流してしまうけど、ジョゼに出てくる背景の一枚絵には、手書きの温かい味わいと、思わずため息が出てしまうような美しさがあった。

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画像引用元:アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』本予告より©2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project



まるで一瞬一瞬の背景に、登場人物の心情が投影されているかのよう。

それにしても、こうした実感が、監督の”引き算”によってもたらされていたのだと考えると、驚きしかない。本当に人間か?

一生忘れられない経験

この作品で一番のお気に入りの場面は、ジョゼが恒夫に連れられて海に行くシーンだ。

薄紫の空とオレンジの夕日、黄金色に照らされる海辺。24歳の夏、ジョゼは生まれて初めて本物の海を見た。

ジョゼには幼い頃、亡き父から課された宿題があった。「海の水はどんな味がするのか?」と。知識ではしょっぱいと知っている。けれども、本物の海の味をジョゼはまだ知らなかった。

一生に一度行けるかどうかも分からなかった海。途方もなく広がる青の世界を目の前にしたとき、ジョゼは声を絞り出す。

「ずっと届かんかった……。屋根に引っかかった赤い風船も、木にくっついとるセミの抜け殻にも、雨の日に水玉の笠を指して歩くのも、神社の階段を駆け上がるのも。全部」

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画像引用元:アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』本予告より ©2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project

恒夫は知った。自分にとって当たり前だったことが、ジョゼには永遠に叶えられない夢だったことを

車椅子の車輪が砂浜にめり込んでも、車椅子から転げ落ちて匍匐前進しても、泣いて顔がグチャグチャになっても。ジョゼは必死に、海を目指した。

そんな彼女を、恒夫は抱きかかえ、海へと歩み出す。「離せ!」とジョゼが叫ぼうと、靴が濡れようと、ズボンが水浸しになろうと。恒夫は構わなかった。そして、二人に波が触れる。

恒夫とジョゼは自然と笑い合う。声を上げて、喜びを弾けさせる。

悔しさを柔らかな夕日が癒やし、感情が水しぶきのように跳ねる。誰も邪魔できない、二人だけの世界。スローモーションで描かれる姿はまるで、魔法がかけられたようだった。

このシーン、思い出すだけで涙腺がバカになる。こんな尊い景色を見せられたら、一生忘れられるわけがない。

前に進むための物語

願っても願っても、手が届かなかった夢。それをジョゼは手に入れた。

後半は恋愛映画でありがちな展開で、退屈するかと思ったものの、最後までしっかり飽きずに見ることができた。

何よりもよかったのが、ジョゼの諦めない姿勢。彼女の行動やセリフは、まるで見ている自分に語っていると思うほど、迫力があった。

自信がなかったり、才能が無いからと諦めたり、何をしたらいいのか分からなくなったり。

何かに行き詰まっているのなら、どうかジョゼを見てほしい。きっと胸の内のモヤモヤが消えて、前に進もうと思える。

これから先、これ以上の恋愛アニメ作品と出合えるだろうか。ちょっと不安だ。


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